統合失調症

統合失調症では大脳皮質や大脳辺縁系、あるいは脳幹の視床、大脳辺縁系の基底核や扁桃体などの機能が、様々なかたちで障害されているのではないかと考えられています。

何人かの患者さんに接してきましたが、しばしば感じるのは、自分にはできないことを強要され続けた結果、現実にはいたたまれず、その苦しさから自分を逃がすように、現実とは別の空間に入りこんでしまった人なのではないかという思いです。

統合失調症の症状としては

幻聴というのがいちばん多いようです。
つまり、誰もいないのに人の声が聞こえてくるといった状態です。あっちへ行けこっちへ行けといった命令する声や、「なにくだらないことやってるんだ、バカ」といった自分を軽蔑するような嘲りの声などが聞こえたりするのだそうですが、それが高じてくると、その誰とも判別できない声の主と言葉をかわすようにもなり、ご本人以外の人にとっては、ひとりごとを言っているということになります。
あるご家族によれば、ご本人の部屋にはそのひと一人しかいないのに、まるで二人で暮らしているかのようになってしまっているという方もいらっしゃいました。

そうした患者さんご本人にくわしく聞いてみますと、頭の中で声が聞こえ始めると、頭蓋骨の中でその声が占める範囲が大きく広がってしまういっぽう、自分の脳のほうは小さく縮んでしまって、10%くらいになってしまったかのように感じるのだそうです。
聞こえてくる声があまりに大きく響くので、そばにいる人の実声は聞こえなくなりますし、その頭の中の声にだけしか答えられないような状態になるらしいです。
実際に誰かとお話ししていても、突然その声に割り込まれ、それに返事をしてしまうので、そばにいる人にとってはまったくおかしなちぐはぐした状態になるわけです。
そして、いつしかその声が聞こえてくるのをいつでも待つような精神状態になっていくのだそうです。

そうした状況がさらに高じると、声が聞こえなくても幻覚を見、妄想をいだくようにもなるようです。実際にそういう方もいらっしゃいました。

こういう病気の人には薬を飲ませて一気に頭の中のモヤを晴らしてやればいいじゃないか、というような考えを持つひともいるのかもしれませんが、そういう荒っぽい考え方では、根治はむずかしいと思います。当院においても1回や2回の施術では、改善したのがはっきりわかるところまではいかないほど深い病気です。
ご家族の方には長いスパンで考えて、ゆったりと対処していただきたいと思っています。

こうした統合失調症の症状や発病の原因などについては、専門家による各説がネットにもたくさん出ていますので、よりくわしく知りたい方はそちらをお読みください。
また、ご家族の方にはすでにお医者さんから受けているご注意をかみしめてやっていってください。

当院での統合失調症の施術

若い人がかかる病気のようですが、治しはできるだけ早いうちに始めるのが最良です。30歳くらいでも、発病してもう十数年になるという方がいらっしゃいましたが、逆算すると中学生のころにはもう発病しているわけで、こういう人は回復までけっこう時間がかかることが多いです。すこしでも早く治療を受けていただきたいところです。

どういう病気についてもいえることですが、病気の原因の究明は私の仕事ではありません。
私の仕事は癒すことなので、あるがままの状態を手ごたえと観察によって受け入れ、経験によって咀嚼して、あとは施術していくだけということになります。
私にとって重要なのは脳内のどこに障害が起きているかだけですので、それをさぐることがいちばん先にする仕事です。そして、それを感覚できたら、その部分を徹底的に施術します。

以前はこの病気の患者さんは積極的に受け入れて、同時期に複数の方を施術していたこともありましたが、私のほうにやる気があっても、受診する皆さんにとっては、粘り強く受診し続けるのはなかなか難しいようです。
通うのが物理的に大変ということもあるのでしょうが、ちょっとよくなってきて、たとえば幻聴などがなくなりますと、よかったよかったなおりましたと(ご家族が)言って、もうこ来なくなってしまうというケースが多いです。
そういう場合は、私の方では施術を終えたという実感はありません。

施術を受け続けていくと、頭の中あるいは耳のすぐそばで聞こえていた声が、頭の後ろの方の少し離れたところで聞こえるようになったとか、声が小さくなったとか、そういった変化が起きた方もいらっしゃいました。
自分の脳が小さく縮んで10%くらいになってしまったかのように感じるとおっしゃっていた方も、施術が深まるにつれ、聞こえてくる声は小さくなったように感じられ、ご自分の脳の占める部分が大きくなっていったようです。

幻聴が消えて受診しなくなっても、しばらくするとまた出はじめて再受診されるケースは多いです。

しかし、そうやって一度でも治ったといえる時間帯が得られた方はまだいいほうで、実際には1回受けただけでもう来なくなってしまうという方も多いです。
1回の施術のうちでも、なかなかいい手応えの変化があり、これはこの次が楽しみだなどと思っていると、もう来なくなるといったことがよくありました。

効果のあるなしが、にわかには判別しがたい病気です。
ご本人には通う意欲は大いにあったように思うのですが・・

統合失調症の場合は、ご本人の人生にたいして、ご家族、特にご両親が大きな権力を持っているケースが多いようで、その親が不要だと思えば、もう受けられなくなるのでしょう。
起きている症状などについて雄弁に語る親御さんの後ろに、自信なげに漠然と立っているお子さん(患者さん)の姿を何度も見てきました。強く自己主張できるくらいならこんな病気にはならないのかもしれません。

以前には

幻聴や幻覚のあった方が1年半近く熱心に通院された後、そうした症状がほとんど出なくなったケースがありました。
表情も明るくゆたかになって、ご自分の意志ではっきりしたことを話せるようにもなり、ご家族の方も大変喜んでおられましたが、もうなおったと思われたのでしょうか、それっきり来なくなってしまいました。本当になおってしまったのだったらそれはそれで大変めでたいけっこうなことなのですが、来なくなって1年くらいたってからメールがあり、再発してしまったとのことでした。しかも、この前よりも悪い状態みたいだったので、今回は入院させましたとのお話でした。
それ以降連絡はありません。
私としては大変残念なケースでしたが、遠方からの通院でしたので、そういう結果になるのもやむを得なかったのでしょうか・・

ガンなどとはちがって、そうつめてやることもない病気ですので、月に2、3回のつもりで、時には一か月ぐらい間が空いても構わないので、とにかく年単位の長いスパンを想定して、継続してぼちぼちと受診されるとよろしいかと思います。
気長に対処せざるを得ない病気です。

こわいと思うのは、専門家によるWeb記事に「統合失調症の患者さんには脳に部分的萎縮があり、その部分の体積が減少している」といった記述があることです。
多数の患者さんを施術するうちには、人によって頭の中が硬いように感じられ、「この人は改善しにくい人だな」という感覚を覚えることがありましたが、それはそういう脳の萎縮といったことがはっきり起きている人に感じるものだったのかもしれません。

発病して長きにわたると、そうなっていくのもやむを得ないのでしょうか。
早いうちに受診して、改善できるものならぜひ改善しておいてもらいたいと思っています。


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